T&E事業のこと

T&E JAPAN 12年目。ひと仕事終えた話-事業の終活―

T&E JAPANを立ち上げて11年。私はこの3年をめどに、次の形を考えようと思っている。
辞めると決めたわけではないし、続けると決めたわけでもない。
ただ、続けることが目的ではないということである。

会社を必要としてくれる人がいるなら続ける方法を探す。
でも、ただ続けるつもりはない。

事業も人生も、自分で考え、自分で決める。
ビジョンとして掲げる「人それぞれのライフスタイルに合う働き方ができる社会」とは
つまり、言い換えれば「自分の意志で決断できる人生」だ。

これからの3年は、それを体現する時間にしたい。

私にとっての「ひと仕事」とは

育児中の母親たちが、ものづくりを通して社会とつながる環境を絶え間なく作り続けること」
創業当時は待機児童問題が深刻で、育休から復帰したくても保育園に入れず、仕事を諦めざるを得ない母親がたくさんいた。企業の多くも、子育てをしながら働きたいという個人の意思を十分に尊重できていなかったと思う。

だから、母親が子育てをしながら社会とつながる機会を増やしたい、という思いでこの仕事を続けてきた。


ハンドメイドを仕事にすることで、自分のペースで働ける。
家事や育児の合間の時間で活動できる。
母親としてだけではなく“作り手”としての自分を持てる。
この環境を整えることが私の役割だと思い、ひたすらに走ってきた。

アクセサリーが並んでいる様子

でも、時代は少しずつ変わってきた

この10年で社会の状況も少しずつ変わってきた。
待機児童問題は少しずつ緩和され、育休明けの仕事も以前よりは個人の意思を尊重する企業が増えた。コロナ禍を経て、オンラインを活用したビジネスの選択肢も広がった。

このように、子育てしながら働ける環境は以前よりも多様になっている。

もちろんまだすべてが解決されたわけではない。
しかし、かつてのように「選択肢がない」状態ではなくなりつつある。
では、T&E JAPANはこれからも同じ形で続けるべきなのか?

続けることが目的ではない

「会社は成長し続けなければならない」
「事業は継続してこそ意味がある」
「承継して次世代につなげるのが経営者の責任」
そんな声をよく聞く。
でも、それは本当に正しいのだろうか?

会社にとって、経営者にとって、
成長し続けることが最適解とは限らない。

何を続け、何を変えるのか
振り回されずに、自分の頭と心で考え、自分で決めて生きること。
これはMBAのビジネススクールで学んでいることでもある。

「このまま同じ形で続けるべきなのか?」

そう考え始めたとき、何となく続けるのではなく、
「もし辞めるとしたら、今やるべきことは何か?」と考えるようになった。

・T&E JAPANがどんな形なら意味を持つのかを見極める
・関わる人たちが、自分の意思で自由に働ける環境を整える

「事業というかたちに囚われず、人と社会が豊かになるものを残す」
それこそが、私が一番やりたいこと、私自身のありかただ。

そう考えた時、迷いが消えてやるべきことがクリアになった。

展示の様子

銀行や投資家には理解されないかもしれない

こんな話を銀行や投資家にしたら、
「貸しているお金は今すぐ返してください」と言われるだろう。
「成長の意思がないなら、支援の対象外です」とも。

今の常識では「会社は成長し続けるもの」「事業は継続」が前提とされる。

だけど、私は別の選択肢を示したい。

続けるために無理をするより、大きくするために自分をすり減らすより、
「本当にやりたいことをやる」
結果として「価値のある文化や考え方を残す」ほうが、私にとっては意味がある。

・無理に続けるのではなく、「誰もが自分の働き方を選べる環境」を整える
・大きくするのではなく、関わる人たちがもっと自由に、ものづくりを通じて社会とつながれる場をつくる

事業の規模や継続の長さではなく、
「どんな文化や価値観を残せたか」 のほうが、私にとっては大切なことだ。

お話会の様子

これからの3年は、ただの延長ではない。

惰性でやるつもりもない。
続けるなら、意味のある形でやる。

何を終えて、何を残すのか、まだ具体的には決めていない。
ただ一つ言えるのは、私は 「続けるために続ける」ことはしない。
もし続けるなら、それは本当に意味のある形で。

自分の人生を、自分で決める

その姿を、T&E JAPANの次の3年で体現してみたい。

事業の終活。

3年後、どんな形になっていたとしても、
私はきっと「この選択でよかった」と笑っていると思う。

それが今の私の答えだ。

セミナーの様子